COVID19 〜Mechanical Ventilation①
少し医療の話を。
自身の備忘録も兼ねて。
COVID19の集中治療をこの2年間それなりにやってきていました。(現在進行形ですが)
COVID19患者の人工呼吸器管理はとても特徴的です。
当初は他の肺炎患者とな少し違う反応があることで試行錯誤でしたが、純粋なARDS、人工呼吸器管理として、とても勉強になりました。
1. 基本はLow Tidal Ventilation(LTV)管理、適切なPEEP
・ARDS患者の管理の基本ですね
・Assist/Control - Volume Control、TV 4-8ml/kg
・ここでの体重は実体重ではなく、predicted body weight
男性=50 + 0.91 [身長 (cm) - 152.4]
女性=45.5 + 0.91 [身長 (cm) - 152.4]
で計算します。よくある間違いですね。
特に日本人女性では152cm未満の方とかちょこちょこいますが、その場合もそのまま計算可能です。
・大体、6ml/kgで開始をトライしますが、難しければ8ml/kgまで許容。
大体挿管直後は筋弛緩が効いてるので、はじめは6ml/kgでもちろん収まるけれど筋弛緩切れてきた時にCOVID19患者は全くコントロールつかないことが多い。重症患者ほど。
そう、COVID19肺炎の特徴、超hyper ventilationである。ほっとくとTV 10ml/kgで済まない、T V >1000mlとか容易でした。
・酸素化の状況に合わせてPEEP調整、コンプライアンスは重症化初期はそこまで低くないですが、時間が経っているものほどコンプライアンスが悪い傾向。でも同様に間質がやられているIPとは全くコンプライアンスが違う。そんなにやられていることが少なく、なので逆に容易に肺が膨らめるから困る。。。
・PEEPは大体10cmH20で準備しておいて、ほとんどの場合はPEEP 12~15cmH20必要でした。もちろんplateau圧は30cmH20を超えないように
当初からコンプライアンスが低い患者らは、15cmH20でも酸素化保持されないことがあり、18cmH20くらいまで使用したこともありますが、ここまでくるとplateau圧が30cmH20を超えるか、hypercapniaでコントロールつかないか、のどちらかは認めていました。
2. 筋弛緩、腹臥位療法 (prone)
・うちの施設では適切なPEEPでPaO2/FiO2<150となってきたら考慮していました。
まずは筋弛緩をスタートするけど、大体セットです。筋弛緩入れるんだったらproneまでやってしまおうと。
筋弛緩はあくまで酸素消費量の抑制、および呼吸器同調性/LTVの管理(肺保護)としての意味合いが強く、肺の保護を考えるとproneが最も合理的。proneでは、もちろん障害されていない肺への血流が増えるので、酸素化も上昇しやすい。
・筋弛緩は基本ACURASYS trialに準じて48時間コース、それ以降は基本終了するがCOVID19患者では自発呼吸が強く・呼吸器との非同調が起きやすいためextendしたり、resetするのに単回で筋弛緩使用したりすることはしばしば。
・ROSE trialの結果としては前よりも推奨は弱いと思うが、COVID19患者の環境や、COVID19肺炎患者の呼吸様式から筋弛緩は必要となる傾向はある
・proneは目安は呼吸状態としては筋弛緩の指標と同程度で、P/F>150が得られるようになるまでで基本は1週間程で。でも症例によりまちまち。でも大体1週間ほどでproneをしても改善が得られなくなってきて、そろそろ終了か、でもやらないとより悪くなるし・・・ということで悩むように。
・またやはりproneだと人がとられるため、第1波は複数名同時にproneになっていることもありましたが、第3波あたりから重症患者数が増えるとともに、看護師の業務軽減が必要とお達しが降ってき、一晩あたりのprone患者の上限が設定されるようになりました。そのため夕方前に4〜5波はほぼ毎日どの患者に適応するか、という議論必要でした。多くの場合、日数経ってきて少しproneの反応が乏しくなってきた患者がそのタイミングでprone終了していくということが多かったです。
基本的にはこれらを行いながら、よくなるのを待つ、というのが基本の治療。
もちろん薬物学的な治療もしていましたが、呼吸器的には上記が基本でした。
次のchapterでCOVID19らしさでの苦労や、HOW-TO的なことも記載していこうと思います。